• テキストサイズ

【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第3章 【第二話】次へ繋ぐ手


それから、いくつもの季節が巡った。

私たちは師匠に連れられ、幾つもの国と街を渡り歩いた。

吹雪の中を歩く日もあれば、雨に濡れた石畳の上で眠る夜もあった。

そして辿り着いたインドでは、ねっとりとした熱気が、慣れない肌を容赦なく灼いた。

師匠が残すものといえば、山のような借金の受領書と、酒の匂いが染みついた不機嫌な背中ばかりだった。

理不尽で。

粗雑で。

容赦がない。

それでも決して、私たちを見捨てることだけはしなかった。

そんな男のもとで、私たちは泥を這うような日々を繰り返していた。

アレンは、少しずつ変わっていった。

初めの頃は、私の傍へ立つだけで精一杯だった少年が、やがて自分の足で立ち、師匠の苛烈な修練にも食らいつくようになる。

マナを思わせる柔らかな口調。

人を安心させる微笑み。

けれど、その奥に抱えている痛みが消えたわけではないことを、私は知っていた。

左手を見るたび、一瞬だけ瞳が曇る。

左目に映る魂の姿に、夜中に息を詰まらせることもあった。

それでも彼は、もう何も感じないふりをしなかった。

苦しいなら、苦しいまま。

怖いなら、怖いまま。

それでも、前へ進もうとしていた。

私自身も、歌だけで戦場を生き抜けるわけではなかった。

「歌う前に喉を潰されたら終わりだろうが」

そう言って師匠が私に課したのは、ニルヴァーナの光を、魂を送るためだけではなく、戦うための“刃”として顕現させる訓練だった。
/ 537ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp