第19章 【第十八話】偽物じゃなかった愛~クロウリー編③
その瞬間。
遠くから、凄まじい轟音が響き渡った。
城全体が、低く軋む。
エリアーデの肩が、びくりと震えた。
「……アレイスター」
その名を呼ぶ声には、初めて明確な焦りが滲んでいる。
アレンの視界には、今もはっきりと見えていた。
エリアーデの内側へ囚われた、苦しげに蠢くひとつの魂。
もう、見間違えようがない。
彼女はAKUMAだ。
「どいてください」
アレンが一歩踏み出す。
「貴方を放っておけば、もっと人が死ぬ」
エリアーデの表情が歪んだ。
「……うるさいわね」
紅い瞳が鋭く細められる。
「……お前達さえ来なければ」
ぽつり、と零れた声。
「私はただ、アレイスターと静かに過ごしていたかっただけなのに」
その声には、苛立ちと、手放したくないものへ縋るような執着が滲んでいた。
「どうして邪魔するの?」
アレンは静かに眉を寄せる。
「……それで、人を殺していい理由にはなりません」
沈黙。
次の瞬間。
エリアーデの瞳へ、剥き出しの苛立ちが宿った。
「黙れッ!!」
絶叫と同時に、無数の蔓がアレンへ殺到する。
アレンは左腕を振り抜き、迫る蔓をまとめて薙ぎ払った。
その時だった。
ドォン――ッ!!
凄まじい轟音と共に、外壁が内側へ爆ぜた。
石片と土埃が室内へ吹き荒れ、本棚が大きく傾く。
「っ!?」
アレンが咄嗟に腕で顔を庇った。