第19章 【第十八話】偽物じゃなかった愛~クロウリー編③
その瞬間、床から這い上がった食人花の蔓が、アレンの身体へ絡み付いた。
「っ……!」
腕を締め上げ、脚を縛り、胸元へ食い込む。
息が出来ない。
視界が霞み、意識がゆっくり沈んでいく。
そんなアレンを見下ろしながら、エリアーデは静かに手を振り上げた。
「さようなら、エクソシスト」
その瞬間だった。
ドクン、と。
アレンの左腕が、本人の意思とは無関係に動いた。
迫る攻撃を、強引に受け止める。
轟音。
白銀の火花が散った。
同時に、左目へ焼け付くような痛みが走る。
「ぁ……っ!!」
視界が歪む。
世界が軋む。
そして、闇の奥から声が響いた。
『タダイマ、アレン』
背筋が凍る。
『闇ガ戻ッテキタヨ』
閉ざされていた左目が、ゆっくり開く。
その瞬間、世界が変わった。
美しい女の姿のさらに内側。
禍々しい器の中で、ひとつの魂が、黒い鎖に縛られるように蹲っていた。
泣いている。
苦しんでいる。
声にならない声で、助けを求めている。
「……っ」
アレンの顔から、血の気が引いた。
初めて、エリアーデの表情が揺らぐ。
「な……」
小さく後退る。
アレンは絡み付いていた蔓を左腕で引き千切り、ゆっくりと立ち上がった。
左目を押さえながら、銀白色の瞳で彼女を見据える。
もう、迷いはない。
「……前言撤回です」
静かな声だった。
左腕のイノセンスが、白銀の光を放つ。
「貴方と戦う理由が出来ました」
エリアーデの紅い瞳が、鋭く歪む。