第19章 【第十八話】偽物じゃなかった愛~クロウリー編③
Side:アレン
一方その頃。
アレンは崩れた回廊を駆け抜けていた。
エリアーデの気配は、まるでこちらを誘い込むように、古城の奥深くへ続いている。
湿った石壁には黒い蔓が這い、燭台の火が風もないのに揺れていた。足音が反響するたび、不気味な静寂がさらに重く沈んでいく。
「待ってください!」
アレンの声が響く。
けれど、エリアーデは振り返らない。
ただ紫色の衣装だけが闇の中で翻り、その姿は次第に奥へ遠ざかっていく。
その時だった。
エリアーデが、ふと肩越しに振り返った。
紅い瞳が、じっとアレンを見つめる。
そして、くすりと笑った。
まるで、“一人で来て”と誘うみたいに。
アレンの背筋へ、ぞわりと嫌な感覚が走る。
罠だ。
そう分かっている。
けれど。
――あの人を放っておいたら駄目だ。
先ほど、彼女は人の身体を躊躇なく食人花へ投げた。
しかも、その身体はAKUMAだった。
何を知っているのか。
何を隠しているのか。
確かめなければならない。
アレンは左手を握り締め、そのまま奥へ踏み込んだ。
次の瞬間、床を這っていた食人花の蔓が一斉に襲い掛かってくる。
「っ!」
巨大化した左腕を振るい、迫る蔓を薙ぎ払う。
けれど、その隙を狙ったように横壁が轟音と共に爆ぜた。
「うわっ!?」
石片の中から、巨大な食人花が牙を剥いて飛び出してくる。
咄嗟に左腕で受け止めるが、衝撃を殺し切れない。
アレンの身体は勢いよく吹き飛ばされ、そのまま古びた木扉を突き破って、奥の小部屋へ叩き込まれた。
背中を床へ強かに打ち付け、鈍い痛みが全身を走る。