第18章 【第十七話】歌声は吸血鬼を惑わせる~クロウリー編②
振り返ると、アレンは逃げていくエリアーデを鋭く睨んでいた。
「……あの人を放置したら駄目です」
アレンの声が、低く変わった。
「クロウリーを煽っているのは、あの人です。逃がしたら、彼はずっとこのままだ」
エリアーデは回廊の闇へ消える直前、こちらを振り返って笑った。
まるで、誘うように。
挑発するように。
逃げているんじゃない。
アレンを、こちらから引き離そうとしている。
それでも、追わなければならない。
「ラビ! ティファを頼みます!!」
アレンが左手を構える。
「はぁ!? お前一人で行く気か!?」
「クロウリーを止めるには、あの人を止めるしかありません!」
アレンは振り返らなかった。
次の瞬間には、もう闇の奥へ飛び込んでいた。
「っ、アレン――!」
呼び止めるより早く、その背中は回廊の闇へ消える。
残された墓地では、クロウリーがなおも苦しげに頭を押さえていた。
その視線が、再び私を捉える。
憎しみと恐怖で揺れる、孤独な赤い瞳。
私は肩の痛みを堪え、もう一度レイピアを握り直した。
そして、再び歌い始める。
この男を壊すためではない。
――救うために。