第18章 【第十七話】歌声は吸血鬼を惑わせる~クロウリー編②
衝撃に身体が吹き飛ばされ、意識が一瞬揺らぐ。
その瞬間。
強い力で身体を引き寄せられた。
「っ……」
ラビの腕だった。
力強く、乱暴なくらい強引に私を抱き留める。
「……悪いけど」
低い声。
いつもの軽さは、一切ない。
「今のオレ、冗談言える気分じゃねぇ」
ラビの翠の瞳が、静かにクロウリーを睨み据える。
そこにあるのは、怒りだった。
「傷付けたこと、後悔させてやるさ」
胸がどくりと鳴る。
ラビの腕が、私を支えたまま離れない。
その熱が、痛みで揺れる意識を辛うじて現実へ繋ぎ止めていた。
クロウリーが再び牙を剥く。
しかし。
「これ以上、手出しはさせません!」
アレンだった。
巨大な爪がクロウリーの牙を受け止め、轟音と火花が墓地へ散る。
ラビが大槌でクロウリーの動きを封じ、アレンが真正面から攻撃を受け止める。
二人の連携には、一切の迷いがなかった。
私は肩を押さえながら、浅く息を吐いた。
喉の奥で『ニルヴァーナ』が激しく脈打っている。
墓地は静かなままだ。
何も聞こえない。
けれど、目の前のクロウリーからだけは、ひどく歪んだ音が伝わってくる。
怒り。
恐怖。
失いたくないという執着。
そして、その奥へ押し込められた、どうしようもない孤独。
この人は、憎んでいるんじゃない。
信じた人を失うことが怖くて、誰かに与えられた恐怖へ縋っている。