第18章 【第十七話】歌声は吸血鬼を惑わせる~クロウリー編②
「銀髪の……あの女だけは、生かしておけぬ……ッ!」
クロウリーの咆哮が、古城の夜を震わせる。
血走った赤い瞳が、真っ直ぐに私を射抜いていた。
その憎悪は、私自身へ向けられているというより――誰かに植え付けられた恐怖だった。
クロウリーの脳裏に、エリアーデの甘い声音が蘇る。
――アレイスター様、あの銀髪の女には気を付けて。
――あの娘は危険ですわ。
――人の心へ入り込み、貴方を騙して、奪ってしまう。
――だから、近付いては駄目。
エリアーデは、ティファを恐れていた。
魂の音を聞く存在だから。
自分の正体へ辿り着くかもしれないから。
そして何より――クロウリーが、自分から離れてしまうことを恐れていた。
「ティファ、逃げて!」
アレンの鋭い警告が飛ぶ。
けれど、クロウリーの速度は、私達の予想を遥かに超えていた。
地面が砕ける。
爆発的な踏み込み。
紅い瞳が、真っ直ぐに私を捉える。
「――っ!」
咄嗟にレイピアを交差させる。
けれど、クロウリーは止まらなかった。
防御を弾き飛ばし、そのまま私の肩口へ牙を剥く。
避けきれない。
鋭い牙が、右肩を浅く抉った。
「っ……ぁ!」
焼けるような痛みが走る。
裂けた団服の下から、熱い血が滲み出した。
「ティファ!!」
アレンとラビの声が重なった。