第18章 【第十七話】歌声は吸血鬼を惑わせる~クロウリー編②
「アレン!!」
私は反射的にレイピアを顕現させ、彼の背後へ滑り込む。
この男は、嘘をついているんじゃない。
ただ、騙されている。
あまりにも純粋に。
「アレン、下がって!」
私は叫ぶ。
「彼、まともに対話出来る状態じゃないわ!!」
その瞬間。
「満!!」
ラビの大槌が、横薙ぎにクロウリーを吹き飛ばした。
鈍い衝撃音。
けれど、クロウリーは怯まない。
空中で身体を捻り、その勢いのままラビへ牙を向ける。
「っ!」
ラビが紙一重で回避した。
鋭い牙が胸元を掠め、団服が裂ける。
私は息を呑んだ。
けれどラビは、軽く舌打ちしただけだった。
いつもの飄々とした笑みは消えている。
翠の瞳だけが、静かに冷えていた。
「……ティファ」
低い声。
「無茶だけはすんなよ」
そう言いながらも、ラビは私を下がらせない。
ただ隣へ並ぶ。
それだけで、“一緒に戦う”という意思が伝わってくる。
「ったく、これだから恋に盲目な男は厄介なんさ……!」
ラビが舌打ち混じりに吐き捨てる。
「ラビがそれ言います?」
アレンの冷静過ぎる声が飛んだ。
「今それ言う!?」
ラビが一瞬だけ振り返る。
その隙すら惜しいほど、クロウリーは速かった。