第18章 【第十七話】歌声は吸血鬼を惑わせる~クロウリー編②
声が少し掠れた。
「少し、眩暈がしただけ。手を離して、ラビ」
ラビが目を見開く。
「いや、でも……顔色やばいって」
「平気よ」
思った以上に素っ気ない声になった。
自分でも分かるくらいに。
ラビの表情が、僅かに曇る。
「……ティファ」
困ったみたいな声音。
その顔を見ると、胸が痛くなる。
けれど今は、素直に甘えられなかった。
アレンは、そんな私達を一瞬だけ見た。
銀灰色の瞳に、何かが揺れる。
けれど、すぐに墓標へ視線を戻した。
「……ティファがそう言うなら」
静かな声。
「ここに埋められているのは、人間じゃないのかもしれません」
私は、はっと息を呑んだ。
ラビの表情からも、さっきまでの戸惑いが消える。
「……どういう意味さ」
アレンはゆっくり墓標の前へ膝をついた。
「確かめるしかありません」
冷たい土へ、左手を触れる。
「この城で、クロウリーが襲っていたものの正体を」
ラビが鉄槌を握り直し、低く息を吐いた。
「……墓荒らしとか、後で絶対怒られるやつさ」
けれど、その声に迷いはなかった。
アレンは無言のまま、左腕を地中へ突き刺した。
鈍い音。
土が抉れ、古びた棺が姿を現す。
私は息を呑んだ。
魂の気配は、やはりない。
ただ、棺の奥から微かに漂うのは、人の死臭とは違う、冷たい金属と焦げた油のような臭いだった。