第18章 【第十七話】歌声は吸血鬼を惑わせる~クロウリー編②
その瞬間。
「――ストラーイクッ!!」
ラビが反射みたいに叫んだ。
「もろタイプさ!!」
沈黙をぶち壊したのは、隣のラビだった。
「……え?」
私は思わず振り返る。
ラビは完全にエリアーデへ目を奪われていた。
戦闘中とは思えないくらい、きらきらした顔で。
「ラビ、こんな時に何を……!」
胸の奥が、妙にざわついた。
そう叱ると、ラビがはっと我に返る。
「あ、いや、ティファ! 違うんだって!」
珍しく狼狽えている。
その反応が、余計に引っ掛かった。
「ラビ! 何あんなのに興奮してるんですか!」
アレンの冷たい声が飛ぶ。
ラビを睨み付けていた。
「僕達は今、食われかけてるんですよ!?」
普段の穏やかさが剥がれ落ちた声。
ラビが「いや、だから違っ……!」と焦る。
その時。
エリアーデの笑みが、すっと消えた。
「……『あんなの』ですって?」
静かな声。
けれど、空気が凍る。
「今、私のことをそう言ったのかしら?」
紅い瞳が細められる。
その瞬間、食人花達がざわりと蠢いた。
私は反射的にレイピアを構える。
エリアーデは、傍らへ転がっていた村人の身体を無造作に持ち上げた。
そして。
ぽい、と。
巨大な食人花の口へ投げ込む。
ぐしゃっ。
肉が潰れ、骨が砕ける音がした。
「食べなさい、お花たち」
甘い声音。
けれど、背筋が凍るほど残酷だった。
「……フンだ」
エリアーデは私達を一瞥すると、そのまま影の奥へ消えていく。
紫の衣装だけが、闇へ溶けるように見えなくなった。