第3章 【第二話】次へ繋ぐ手
⸻
アレン視点
⸻
僕の世界は、あの日からずっと灰色だった。
マナを、自分の手で壊した。
その事実だけが、朝も夜も関係なく、何度も何度も頭の中で繰り返された。
僕が呼び戻した。
僕が願った。
僕が、マナをあんな姿にした。
そして。
僕の左手が、マナを壊した。
目を閉じれば、あの日の光景が蘇る。
恐ろしい姿になったマナ。
僕を呪う声。
そして、僕の意思とは関係なく動いた左手。
体の痛みは、ずっと続いていた。
左顔は焼けるように疼き、息をするだけでも傷が脈打った。
痛みに叫び続けて、喉からはまともな声も出なくなった。
けれど、いつからか涙は出なくなっていた。
悲しくないわけではない。
痛くないわけでもない。
ただ、泣くことすら、自分には許されないように思えていた。
けれど、一番痛かったのは、そこではなかった。
もう二度と、マナに会えない。
もう二度と、僕の名前を呼んではもらえない。
それなのに、僕だけがまだ息をしている。
そのことが、何より苦しかった。
赤い髪の男は、僕を見捨てなかった。
怖い顔をして。
乱暴な声で。
食べろと言い、立てと言い、眠れなくても傍の椅子に座っていた。
初めは、どうしてそんなことをするのか分からなかった。
僕なんて、放っておけばいいのに。
僕は、救われる資格なんてないのに。
それでも、あの人は何度も食事を運んだ。
僕が食べなければ、苛立った声で匙を突きつけた。
僕が夜に息を詰まらせれば、何も言わずに窓辺の椅子へ座っていた。