第17章 【第十六話】吸血鬼退治と三人の距離~クロウリー編①
教団本部――室長室。
重厚な扉を開けると、書類の山に埋もれたコムイさんが顔を上げた。
窓から差し込む夕暮れの光が、室内を柔らかな橙色へ染めている。
「来たね、三人とも」
呼び出されたのは、私、アレン、そしてラビ。
アレンは白色の髪を揺らしながら、真面目な顔で立っている。
ラビは最初、壁へ寄りかかるように立っていた。
けれど話が進むうち、気付けばいつの間にか私の隣へ来ている。
本人も無意識なのか、特に気にした様子はない。
その距離感が、また妙に意識へ残った。
「今回の任務だけど――」
コムイ室長が机の上へ一枚の資料を広げる。
そこに映っていた顔を見た瞬間、胸が小さく揺れた。
クロス・マリアン。
アレンの師匠であり、私にとっても長い年月を共に旅した存在。
アレンの表情が、僅かに険しくなる。
「クロス元帥の痕跡が見つかった」
室内へ静かな緊張が落ちた。
「最後の目撃情報は東欧方面。ファインダーを使って追跡しているけれど、途中で足取りが完全に消えている」
数秒の沈黙。
やがてアレンが、深くため息を吐いた。
「……四年間まともに帰ってこない人の痕跡なんて、嫌な予感しかしません」
疲れ切った声だった。