第15章 【第十四話】言いかけた熱
ラビが小さく眉を寄せる。
「もう行った」
「じゃあ、ちゃんと治療受けて」
「受けてるさ」
「嘘」
即答だった。
ラビが押し黙る。
図星らしい。
私は小さく息を吐いた。
「ラビ、絶対途中で抜け出したでしょう」
「……」
沈黙。
やっぱり図星だった。
「子供じゃないのよ……」
「だって暇なんさ、医務室」
「そういう問題じゃないってば」
思わず言い返すと、ラビがふっと笑った。
ほんの少しだけ。
いつもの軽い笑みに近い顔だった。
「……怒ってんの?」
「怒ってる」
「こわ」
全然怖がっていない声。
私は少しむっとして、ラビの包帯の端を軽く引いた。
「っ……!」
ラビが眉を寄せる。
「ほら、痛いんでしょ?」
「……お前なぁ」
呆れた声。
けれど、その表情は少しだけ安心したみたいだった。
私は包帯へそっと触れる。
熱い。
まだ、力を使った時の熱が残っているみたいに。
「……ちゃんと休んで」
ぽつりと零れる。
「私のことばっかり気にして、自分は無茶して……」
そこまで言って、私は言葉に詰まった。
――私のことばっかり。
自分で口にした言葉が、妙に胸へ引っ掛かる。
ラビも黙っていた。
数秒。
静かな空気。
やがて。
「……気にすんだろ」
ラビは視線を逸らしたまま、小さく息を吐く。
「目の前で、好きな女が傷だらけになってんの見たら」
どくん、と鼓動が跳ねた。
時間が止まった気がした。
目を見開いたまま、ラビを見る。
ラビ自身も、言ってから気付いたらしい。
ぴたりと動きが止まる。
沈黙。
数秒。
それから、ラビは深く顔を覆った。
「……っ、やべ」
掠れた声。