第15章 【第十四話】言いかけた熱
それから数日後。
私は医務室で包帯を替えてもらった帰り、科学班フロア近くの回廊を歩いていた。
この辺りは、昼間でも薄暗い。
遠くで機械音が響き、空気には薬品と金属の匂いが混ざっている。
その時だった。
「……っ」
低く息を呑むような声が、回廊の奥から聞こえた。
私は反射的に足を止める。
今の声――。
「……ラビ?」
角を曲がる。
そこには、壁へ背を預けたラビがいた。
「ラビ……!」
思わず名前を呼ぶと、彼は一瞬だけこちらを見る。
けれどすぐに、気まずそうに視線を逸らした。
「……なんでこんなとこいんさ」
声に、いつもの軽さがなかった。
顔色が悪い。
呼吸も、どこか浅い。
私は慌てて近付き――そして、違和感に気付いた。
ラビの右手。
巻かれた包帯に、うっすら赤が滲んでいる。
「……っ」
胸がざわついた。
「それ、火傷悪化してるの?」
ラビが咄嗟に手を引く。
「大したことねぇ」
即答だった。