第15章 【第十四話】言いかけた熱
ラビは机に突っ伏したまま、乱暴に前髪を掻き上げた。
思い出すだけで、呼吸が少し速くなる。
一番たちが悪いのは。
押し倒した直後、ティファが確かに動揺していたことだった。
頬を赤くして。
呼吸を乱して。
視線を逸らして。
それなのに、きっと本人はまだ分かっていない。
自分がなぜ、あんな顔をしたのか。
その感情の名前を。
そこまで考えて、ラビは深く長い溜息を吐いた。
静まり返った資料室。
乾きかけたインク。
握り潰された報告書。
たった一人の女のことで、記録者の顔すら保てなくなっている。
ラビは冷たい机に顔を伏せたまま、誰にも聞こえない声でぼそりと呟いた。
「……終わってんな、オレ」