第15章 【第十四話】言いかけた熱
けれど、腕を支える指先は、さっきまでと変わらず驚くほど優しかった。
傷へ響かないよう、慎重に包帯を巻き直していく。
その横顔を見つめながら、思考が止まっていた。
押し倒された。
ラビに。
あんな近くで。
――オレのこと意識しろよ。
その言葉が蘇った瞬間、また鼓動が跳ねる。
顔が熱い。
耳まで熱い。
慌てて視線を壁へ逸らした。
……なんなの、これ。
今までのラビと違う。
違い過ぎる。
いや、違ったんじゃない。
自分が、彼の笑顔の奥にあるものに気付いていなかっただけ――?
そこまで考えて、頭が真っ白になった。
無理。
これ以上は考えたくない。
でも、気になる。
視界の端にいる彼の存在が、どうしても気になる。
包帯を巻くたびに指先が肌を掠める。
それだけで、心臓が落ち着かない。
私は耐えるように、左手でシーツを握り締めた。
ラビも、それ以降はほとんど口を開かなかった。
けれど耳はまだ赤い。
包帯を巻く手だけが妙に丁寧で、それが余計に息苦しかった。
やがて。
「……よし」
短い声。
包帯の結び目が、最後に軽く引かれる。
「これで平気さ」
私は小さく頷いた。
「……ありがとう」
掠れた声しか出なかった。
ラビが一瞬だけ顔を上げる。
視線が合う。
その瞬間、さっきの距離が脳裏へ蘇って、反射的に目を逸らした。
ラビも何か言いかけて、結局飲み込む。
数秒。
張り詰めた沈黙。
やがてラビは、小さく息を吐いて立ち上がった。
「……今日は、もう寝ろ」