第15章 【第十四話】言いかけた熱
「……オレが、どんだけ我慢してると思ってんの」
どくん、と胸が跳ねた。
ラビを見つめる。
真正面から。
今まで見たことのない顔だった。
ブックマンの後継者でも、教団の仲間でもない。
ただ一人の男としてのラビが、そこにいた。
「……っ」
頬が熱い。
頭の芯まで、ぼうっとする。
ラビはそんな私の反応を見つめたまま、掠れた声で呟いた。
「……そんな反応すんなら」
「もうちょい、オレのこと意識しろよ」
その言葉が、胸の奥へ真っ直ぐ落ちてくる。
私は何も言えなかった。
ただ、彼に押し倒されているという事実だけが、やけに鮮明だった。
近い呼吸。
熱い視線。
逃げ場のない距離。
心臓がうるさい。
こんな音、聞こえてしまう。
そう思った時、ラビがふいに深く息を吐いた。
「……っ、くそ」
掠れた声。
次の瞬間、彼は乱暴に前髪を掻き上げると、ぱっと身体を離した。
重みが消える。
私は寝台に沈んだまま、呆然と瞬きをする。
ラビは数歩離れた場所で背を向け、片手で顔を覆っていた。
「……マジで、危ねぇ……」
ぼそりと落ちた声。
私はまだ、自分に起きたことを飲み込めない。
ただ、掴まれていた手首の熱だけが、皮膚に残っていた。
ラビはしばらく黙っていた。
やがて、無理やり息を整えるように深く呼吸すると、再び私の横へ座り直す。
私は慌てて上体を起こした。
「……腕」
低い声だった。
「包帯、途中だったろ。」
「あ……」
言われて、ようやく思い出す。
熱を持った頭のまま、右腕を差し出した。
ラビは視線を逸らしたまま、新しい包帯を手に取る。