第15章 【第十四話】言いかけた熱
それから。
「昨日……ちゃんと眠れたか?」
ぽつりと問う。
私は少しだけ目を伏せた。
昨夜。
狭い病室。
繋がれたままだった手。
眠りに落ちる直前、耳元を掠めた声。
「……ええ」
小さく頷く。
「安心して、眠れたわ」
その瞬間、ラビの手がぴたりと止まった。
静寂。
あまりに動かないので、私は少しだけ首を傾げた。
「……ラビ?」
返事はない。
ただ、背後に立つ気配だけが、ぐっと近くなる。
「……お前さぁ」
掠れた声。
いつもの軽さは、どこにもなかった。
私がゆっくり振り返ろうとした、その瞬間。
ぐ、と後頭部へ重みが落ちた。
「……っ」
ラビの額だった。
銀髪に顔を埋めるようにして、彼はそのまま動かない。
「ラビ……?」
「……今、振り向くな」
低い声。
熱を押し殺したような声音だった。
タオル越しではない体温が、背中越しに伝わってくる。
無意識に指先を握りしめた。
「……どうしたの?」
問いかける。
けれど、ラビはすぐには答えなかった。
銀髪へ触れていた指先だけが、ゆっくり髪を梳いていく。
まるで、自分を落ち着かせようとしているみたいに。
やがて。
「……安心した、とかさ」
苦しげな声。
「そういうの、今あんま気軽に言うな」
私は小さく瞬きをした。
言葉の意味が、うまく届かない。
けれど、すぐ近くにあるラビの呼吸が、微かに乱れていることだけは分かった。
「……変なラビ」
その不器用な強張りが少しだけ可笑しくて、小さく笑った。
その瞬間だった。