• テキストサイズ

【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第15章 【第十四話】言いかけた熱 


大浴場は、湯気で白く煙っていた。

石床へ響く水音。

私は椅子へ腰掛け、温かな湯の気配に小さく息を吐く。

背後から、リナリーの指先が長い銀髪へそっと触れた。

「痛かった?」

優しい声だった。

湯気の向こうへ、少しだけ目を伏せる。

「……少し、ね」

リナリーは、それ以上任務のことを問い詰めなかった。

ただ、泡立てた手で銀髪を丁寧に洗い流してくれる。

引っ張らないように。

傷へ響かないように。

その手の温かさが、妙に胸に染みた。

しばらく、水音だけが静かに続く。

やがて。

「……ラビ、すごく顔が怖かったって聞いたわ」

不意に落ちた言葉に、小さく肩を揺らした。

「ジョニーたちが言ってたの。戻ってきた時も、ラビ、ずっとティファの様子ばかり気にしてたって」

湯気の向こうで、リナリーが小さく笑う。

「いつもなら冗談で流すのに、今日は全然違ったって。……お熱いねって、からかわれてたわよ?」

胸の奥が、小さく揺れた。

私は何も答えられなかった。

代わりに脳裏へ浮かぶのは――

――目ぇ閉じると、お前が消えんのが浮かぶ。

昨夜、狭い病室で落ちた、掠れた声だった。

「……ティファ?」

リナリーが不思議そうに覗き込む。

はっとして顔を上げた。

「な、なに?」

「ふふ。なんでもないわ」

意味深に笑われ、小さく眉を寄せる。

けれど、それ以上追及されることはなかった。
/ 537ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp