第15章 【第十四話】言いかけた熱
夕刻。
長い汽笛を鳴らしながら、汽車が教団最寄りの終着駅へ滑り込んだ。
停泊していた黒塗りの小舟へ乗り込むと、水面が静かに揺れる。
夜の運河を進むこと数分。
やがて現れた巨大な石壁と、隠し水路の灯りを見た瞬間、ようやく“帰ってきた”のだと実感した。
「おかえりなさーい!」
本部へ戻った瞬間、エントランス側からジョニーの大きな声が響く。
「ティファ!ラビ!無事だったんだね!」
勢いよく駆け寄ってきたジョニーを見て、私は小さく笑った。
「心配かけたみたいね」
「そりゃあね!レベル3のAKUMAが出たって聞いたから」
後ろでは科学班達もざわついている。
「空間歪曲ってマジだったんだろ?」
「レベル3も出たらしいぞ」
「少年は?」
飛び交う声。
人の気配が増えた瞬間、ラビはいつもの笑みを貼り直した。
まるで、昨夜の熱を誰にも見られないように。
隣にいたラビが、すっと一歩離れる。
ほんの僅か。
けれど、病院を出てからずっと近かった距離が、急に元へ戻った気がした。
「……?」
私は小さく瞬きをする。
ラビはいつもの軽い笑みを浮かべていた。
「いやぁ、死ぬかと思ったさ」
軽口混じりの声。
いつも通り。
なのに、さっきまで隣にあった気配が、急に遠のいた気がした。
胸の奥が、妙に静かだった。
理由は分からない。
分からないまま、私は小さく視線を伏せる。