第3章 【第二話】次へ繋ぐ手
アレンは、きょとんとしたようにマザーを見る。
けれど、その表情はすぐに俯き、細い指が膝の上で絡まった。
師匠は何も言わなかった。
ただ、微かに眉を寄せる。
私は、どう受け止めればいいのか分からなかった。
アレンは立ち上がろうとしている。
けれど、その歩き方は、自分が失った人の影を纏っている。
それほどまでに、マナという人は彼の中で大きかったのだろう。
「……変、ですか?」
アレンが、不安そうに尋ねた。
私は小さく息を呑む。
師匠も、マザーも答えなかった。
だから私は、抱えていた布を胸へ寄せたまま、静かに首を横へ振った。
「変じゃないわ」
アレンの瞳が、揺れる。
「……本当ですか?」
「うん」
私は、できるだけ柔らかく笑った。
「アレンが話してくれて、嬉しい」
その言葉に、アレンは何も返さなかった。
けれど、俯いた頬がほんの僅かに緩んだように見えた。
それが、私とアレンが初めて交わした、まともな会話だった。