第14章 【第十三話】夜明けまで、この手を
「……ラビも、診てもらって」
彼がぴくりと眉を寄せる。
「オレは平気さ」
即答だった。
けれど、声は掠れ、肩はまだ大きく上下している。火判の反動が抜けていないことは、誰の目にも明らかだった。
「平気じゃないわ」
私は静かに言い切る。
「手が、震えているもの」
ラビが言葉を失った。
「……お願い。ちゃんと診てもらって」
しばらく、返事はなかった。
やがてラビは、諦めたように小さく息を吐いた。
「……分かった」
低い声だった。
けれど、その響きは先ほどより少しだけ柔らかかった。
慌ただしい声が飛び交う中、私たちはそれぞれ処置室へ運ばれていく。
それでも、ラビの指は最後まで私の袖を離そうとしなかった。
まるで、ほんの少しでも目を離せば、私がまたあの歪んだ空間へ消えてしまうと恐れているみたいに。