第14章 【第十三話】夜明けまで、この手を
咄嗟に抱き留められる。触れた腕は熱く、呼吸は荒い。支える力が強すぎて、痛む右腕へ鈍い衝撃が走った。
けれど、ラビは気付いていない。
気付けないほど、余裕がなかった。
「おい、しっかりしろ……!」
低い声が、僅かに震えている。
私は彼の団服を左手で軽く掴み、小さく息を吐いた。
「……平気、よ」
「平気なわけあるか」
即答だった。
いつもの軽さも、誤魔化すような笑みもない。
翠の瞳が、血の滲む私の右腕へ釘付けになっている。その目に浮かぶ焦りを見た瞬間、胸の奥が少しだけ苦しくなった。
病院の奥から、白衣姿の医師と看護師たちが慌ただしく駆け寄ってくる。
教団関係者だと気付いた途端、彼らの表情が変わった。
「すぐ処置室へ!」
「患者は二名……いえ、その子供もです。三名、急いで!」
「担架を持ってきて!」
「ラビ」
私が小さく名前を呼ぶ。
ようやく、彼の視線が私へ戻った。
私は痛む腕を庇いながら、それでも微かに口元を緩める。
「……ちゃんと、いるわ」
その瞬間。
ラビの呼吸が、僅かに止まった。
彼は何かを言いかけるように唇を動かした。けれど、結局何も言わず、誤魔化すように視線を逸らす。
「……馬鹿」
掠れた声。
けれど、その手はすぐには離れなかった。
指先だけが、確かめるように私の袖へ残っている。
私はその指先を、左手でそっと掴み返した。