第13章 【第十二話】記録に残らない熱
「……お前が連れ去られそうになった時」
ぽつりと、声が落ちる。
「頭ん中、真っ白になった……」
私は何も言えず、彼を見つめた。
「記録とか、掟とか……全部どうでもよくなった」
ラビの声が震える。
「目の前で、お前が消えていくのを……ただ見てるなんて……できるわけねぇだろ……っ!」
その声は、もう押し殺し切れない叫びに近かった。
「ブックマンとして失格だって分かってる……!」
ラビは、苦しそうに俯く。
「でも、俺は……」
言葉が途切れる。
その先を、彼は言えなかった。
私にも、何を言いかけたのかは分からない。
ただ、ラビが自分を責めていることだけは分かった。
ブックマンでありながら、目の前で誰かが傷付くことへ平静でいられなかった自分を。
記録する側でいなければならないのに、私を失うことへ耐えられなかった自分を。
私は、そっと彼の手へ自分の手を重ねた。
「……それでもいいのよ、ラビ」
ラビが、ゆっくり顔を上げる。
「私は、ブックマンのことを全部分かっているわけではないから……あなたが何を背負っているのかも、きっと全部は理解できない」
それでも。
私は、握られた指を離さなかった。
「でも、私を助けようとしてくれたことを、間違いだったみたいに言わないで……!」
ラビの翠の瞳が、微かに揺れる。
「あなたが来てくれなかったら……私はここにいなかったかもしれない」
喉の奥が、僅かに詰まる。