第13章 【第十二話】記録に残らない熱
「この子は……」
視線を少年へ向ける。
「この子も……あなたたちが使ったの?」
歌を繋ぎながら、私は少年へ視線を向ける。
透けかけた細い身体。
雨に濡れた裸足。
助けを求めることさえ、もう忘れかけているような虚ろな瞳。
その姿へ、胸の奥が締め付けられた。
AKUMAは、喉の奥で濁った笑い声を転がした。
「使った、か」
歪んだ顔が、愉しげに歪む。
「その小さな生者は、この場所を作るための材料ではない」
「……では、どうしてここにいるの」
「後から放り込んだのだよ」
息が止まりかけた。
「……後から?」
「この箱が形を成したあと、お前をここへ呼び寄せるためにな」
AKUMAの声が、粘つくように低くなる。
「終われぬ死者どもの中へ、生きた子供を一人放り込めばどうなるか。助けを求め、泣き、縋り、やがて存在を削られていく」
歪んだ口元が、愉しげに吊り上がった。
「お前なら、この歪みを感じ取り、必ずここへ辿り着く。そして、その子を見れば、歌わずにはいられぬ」
喉の奥が、凍り付いた。
この子は、偶然ここへ迷い込んだのではない。
誰かが。
私をここへ引き込むために、わざと連れて来た。
「……私を、誘き出すために?」
AKUMAの口元が、裂けるように広がる。
少年の輪郭が、また僅かに崩れる。
私は必死に旋律を強めた。
白銀の光が、その小さな身体へ絡み付く灰色の歪みを押し返す。