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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第13章 【第十二話】記録に残らない熱


ゆっくりと息を吸う。

喉の奥で、ニルヴァーナが目覚める。

淡い光が、胸の内側から静かに満ちていった。

私は小さく、旋律を紡いだ。

音が、空間へ落ちる。

それまで何も返してこなかった遊園地が、私の歌だけを受け止めた。

白銀の音が、濡れた石畳の上を滑る。

崩れた売店を抜け。

色褪せた馬たちの間を通り。

透けかけた少年の身体へ、そっと触れる。

少年の輪郭が、僅かに揺れた。

頬に、ほんの少し色が戻る。

「……届いてる」

小さく呟いた、その時だった。

遊園地全体が、音もなく歪んだ。

観覧車の影が、不自然に伸びる。

メリーゴーランドの馬たちが、一斉にこちらへ顔を向けたように見えた。

足元の水溜まりへ映る景色が、現実より一瞬遅れて揺れた。

「ティファ、止めるな!」

ラビの声が鋭く飛ぶ。

「来るぞ!」

次の瞬間。

細長い人型の身体が、闇の中からぬるりと姿を現した。

白い仮面めいた頭部には、貼り付いたような歯列が浮かび、空虚な眼窩の奥だけが不気味に光っている。

背後からは、細長い触手が幾本も濡れた地面を這い、黒い泥のように広がっていた。

レベル3のAKUMA。

「……見つけたぞ」

歪んだ口元が、ゆっくりと開いた。

喉の奥が冷える。
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