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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第13章 【第十二話】記録に残らない熱


雨に濡れた紙面へ、笑顔の道化師が描かれている。

大きく口を開けて笑っているはずなのに、剥がれ落ちた塗料のせいで、その顔は泣いているようにも見えた。

やがて、歪んだ鉄門の前へ辿り着く。

門の上には、錆で判別しにくくなった文字が並んでいた。

かつては華やかな色を宿していたのだろう。

今では、薄い灰色へ褪せた文字が、来訪者を拒むように揺れている。

門は、僅かに開いていた。

まるで、最初から誰かを招き入れるために。

ラビが鉄槌へ手を掛ける。

「トーマスは後ろ。何か出たら、戦うより先に退路を探せ」

「は、はい」

「ティファ」

「ええ」

私は喉元へ指を添えた。

門を潜った瞬間。

どくん、と。

ニルヴァーナが、強く脈打った。

「……っ」

胸の奥を掻き混ぜるような感覚に、思わず息を呑む。

温かくも冷たくもない。

ただ、ひどく歪んだ響き。

どこかで聞いたことがある。

アンナの村で感じた、あの不完全な歌に似ている。

けれど、あの時よりも狭く、濃い。

村全体へ溶けていた歪みが、この場所では逃げ道を失い、内側へ凝縮されている。

「ティファ?」

ラビの声が、鋭くなる。

私は喉元を押さえたまま、ゆっくり顔を上げた。

「……前の村と、似ている」

「何?」

「魂の残響が、変に絡まっている。けれど、今度は広がっていない。ここへ……閉じ込められているみたい」
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