第13章 【第十二話】記録に残らない熱
一歩踏み出したあとに、ようやく後ろから自分の足音が追い掛けてくる。
まるで、身体と影の間に僅かなずれが生まれているみたいだった。
私は思わず足を止める。
「……ラビ」
呼び掛けるより早く、彼の手が横へ伸びた。
触れはしない。
けれど、私がそれ以上進むのを制するように、掌が目の前へ差し出される。
「分かってる」
低い声。
ラビは足元の小石を拾い上げ、遊園地へ続く道の先へ軽く放った。
小石は濡れた地面へ落ちる。
跳ねる。
転がる。
けれど、音だけが途中で消えた。
「……途中から、音が返ってこねぇ」
ラビの表情が険しくなる。
「距離も変だ。目で見えてる近さと、実際の位置が噛み合ってねぇ」
トーマスが、顔色を失いながら記録端末へ視線を落とした。
「測定値が……安定しません。園の入口まで二百メートルと表示された直後に、五百メートルへ変化しています」
「下手に一人で動くなよ」
ラビが振り返らずに告げる。
「ティファも。先に行くなら、必ず声掛けろ」
その言い方が、ひどく強く聞こえた。
私は僅かに目を伏せる。
「……分かっているわ」
答えると、ラビは何も返さなかった。
ただ、僅かに握り締められた拳が、ゆっくりと解かれた。
三人で、遊園地へ向かう。
道の両脇には、色褪せた看板が倒れていた。