第13章 【第十二話】記録に残らない熱
汽車を降りた瞬間、湿った冷気が肌へまとわりついた。
雨はすでに止んでいる。
けれど、古びた無人駅の屋根からは、溜まった雫が一定の間隔で石床へ落ち続けていた。
ぽたり。
ぽたり。
本来なら静かな駅舎へ響くはずの音は、妙に輪郭が薄い。耳へ届く前に、どこかへ吸い込まれているみたいだった。
「……ここが、任務地の最寄り駅です」
同行するトーマスが、抱えていた資料を握り直した。
まだ若い。恐怖を隠そうとしているのか、声だけは努めて平静に整えられている。
「この先、およそ一キロほど進んだ場所に、閉鎖された遊園地があります。十五年前、園内の火災事故で多数の死者が出て以降、放棄されていた施設です」
私は駅舎の先へ視線を向けた。
濡れた道の向こう。
灰色の霧へ溶け込むように、巨大な観覧車の輪郭が見える。
ぎぃ……。
錆び付いた金属が擦れる、不快な音。
風など吹いていないのに、観覧車はほんの僅かに回っていた。
「数ヶ月前から、周辺で行方不明者が相次いでいます。さらに、微弱なAKUMA反応と、局所的な空間異常が確認されました。先行して調査へ入ったファインダー二名とも、現在まで連絡が取れていません」
青年の声が、最後だけ僅かに掠れる。