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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第3章 【第二話】次へ繋ぐ手


私は盆を受け取り、恐る恐る部屋へ入った。

師匠は窓際の椅子に座り、煙草を指に挟んだまま、ベッドのアレンを見ていた。

「……置け」

短く言われ、私は寝台脇の小机へ盆を置く。

アレンは目を開けていた。

けれど、その瞳は何も映していない。

天井のどこかを見つめたまま、瞬きすらほとんどしなかった。

初めて真正面から見たその顔に、息が詰まった。

傷が痛々しいからだけではない。

これほど苦しんでいるはずなのに、彼は泣いていなかった。

声も上げない。

助けを求めることもしない。

生きているのに、そこにいないように見えた。

雪の中で母を失ったばかりの頃の自分より、ずっと深い場所へ沈んでいる。

「……アレン」

無意識に、名前を呼んでいた。

反応はない。

ただ、虚ろな瞳だけが、何もない天井を見つめ続けていた。

師匠の視線が、私へ向いた。

「出ろ」

「……でも」

「今のお前にできることはねぇ」

冷たい言葉だった。

私は唇を噛む。

けれど、反論することはできなかった。

本当に、何もできなかったから。

私は俯いたまま、部屋を出る。

扉を閉める直前、もう一度だけアレンを振り返った。

彼は変わらず、何も見ていない目で天井を見つめていた。

その顔が、胸に焼きついた。
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