第13章 【第十二話】記録に残らない熱
ラビは、ほんの一瞬だけ黙った。
それから、いつものように口元を上げる。
「分かってるさ。ちゃんと全員連れて帰ってくる」
軽い言い方だった。
けれど、その言葉の最後だけが、妙に強く響いた。
私は思わず、ラビの横顔を見る。
彼はもうこちらを見ていない。
正門の向こう、霧に霞む道だけを見据えていた。
「行ってきます」
私が告げると、コムイさんは静かに頷く。
「行ってらっしゃい。気を付けて」
汽車の出発を知らせる汽笛が、遠くから響いた。
ラビが先に歩き出す。
私は一度だけ、背後に聳える教団本部の石門を振り返った。
それから、トーマスと共に彼の後を追う。
ラビのすぐ隣ではなく、半歩だけ後ろを。
今は、それ以上近付く理由を見つけられなかった。