第11章 【第十話】巻き戻らない時間
襲撃に現れたAKUMAは、すべて破壊された。
けれど、病院の位置まで敵に把握されていた以上、これ以上この街へ留まることは危険だと判断された。
アレンとリナリーも、応急処置ののち移動可能と確認されると、私たちは十分な休息を取る間もなく、本部へ戻ることになった。
重たい蒸気音を響かせながら、汽車は黒の教団本部へ向かって走り続けていた。
窓の外には、灰色の雪原がどこまでも広がっている。
雪を含んだ風が車体の隙間へぶつかるたび、低い唸り声のような音が響いた。
コンパートメントの中には、重たい沈黙が満ちている。
向かいの席では、リナリーが窓の外へ顔を向けたまま、膝の上で両手を固く握り締めていた。
その隣に座るアレンは、何度も彼女へ視線を向けては、言葉を飲み込むように目を伏せている。
病院を出てから、二人はほとんど言葉を交わしていなかった。
巻き戻しの街での任務。
アレンが、自分の身体を顧みないように戦ったこと。
リナリーが何を思っているのか、私にはすべて分かるわけではない。
けれど。
彼女の白い指が痛いほど強く組まれていることも。
アレンの方を一度も見ようとしない横顔も。
そこにあるのが、単なる怒りではないことを物語っていた。
失うのが、怖かったのだろう。
大切だからこそ。
無茶をして傷付いていく姿を見ることが、耐えられなかったのだろう。