第11章 【第十話】巻き戻らない時間
沈黙。
ラビの片眉が、ぴくりと上がる。
アレンの銀灰色の瞳が、私の腕を掴んだままのラビの手へ落ちた。
「……ラビ」
「なんさ」
「その手、離した方がいいんじゃないですか。ティファが困っています」
「え……」
突然こちらへ振られ、私は返事に詰まる。
その瞬間、ラビの指が僅かに強張った。
至近距離で目が合う。
露わになった翠の瞳が、ほんの一瞬だけ揺れた。
まるで、今になって自分が私を抱き寄せたままだと気付いたみたいに。
けれど、手を離すより先に、アレンの声が落ちる。
「困っているじゃないですか」
「アレンだって、さっきまでティファの手ぇ握ってたろ」
「僕は、久しぶりに再会できたから……!」
「オレだって助けただけさ」
「助けた後まで抱え込む必要はありませんよね」
「細けぇなぁ」
笑っている。
二人とも、一応は笑っている。
けれど、病室の空気だけが、妙にぴりついていた。
私は慌てて口を開く。
「え、えっと……二人とも。今はまだ、周囲の確認を――」
その時だった。
――ミシッ。
足元から、何か嫌な音がした。
ラビが眉を寄せる。
「……ん?」
続いて。
瓦礫の下から、低く押し殺された声が響いた。
「……お前達」
空気が凍る。
「いつまで、儂を下敷きにしておる」
沈黙。
ラビとアレンの顔が、同時に固まった。
恐る恐る視線を下へ向ける。