第11章 【第十話】巻き戻らない時間
黒い球体が次々と吹き飛ばされ、壁へ、床へ、天井近くへと叩き付けられる。
白銀の光が、いくつも弾けた。
甲高い断末魔が重なり、やがて粉塵の向こうから、忌まわしい駆動音が途絶える。
最後に巨大な槌が床へ激突し、凄まじい衝撃と共にようやく止まった。
土煙と瓦礫が、一斉に舞い上がった。
「っ、げほ……!」
咳き込みながら、私は目元を腕で庇う。
「ティファ!」
煙の向こうから、ラビの声がした。
次の瞬間。
がし、と腕を掴まれる。
強い力で身体を引かれ、気付けば私はラビの胸元へ引き寄せられていた。
「……無事か」
低い声。
顔を上げる。
目の前には、埃まみれになったラビの顔があった。
いつもの軽口を叩く余裕もなかったのか、露わになった翠の瞳が険しく揺れている。
私の腕を掴む手も、呼吸も、微かに震えていた。
「……ええ。私は大丈夫。リナリーも、コムイさんも――」
答え終える前に、ラビが深く息を吐いた。
まるで、ようやく呼吸の仕方を思い出したみたいに。
「……はぁ。マジで死ぬかと思ったさ」
「あ、あの……ラビ」
「ん?」
「近いわ……」
そこで初めて、自分が私を抱え込むように引き寄せたままだったことへ気付いたらしい。
ラビの動きが、ぴたりと止まる。
けれど、手はすぐには離れなかった。
その時。
「ティファ!怪我はありませんか!?」
遅れて駆け寄ってきたアレンが、ラビの腕の中にいる私を見て固まった。