第10章 【第九話】空白の再会
「……お願いします」
アレンは小さく答えた。
その声を聞いた直後。
ラビが、私の肩からそっと手を離した。
離れる直前。
その指が、ほんの一瞬だけ、私の肩を確かめるように押さえる。
けれど、次の瞬間には何事もなかったように引かれていた。
埋まりかけた距離が、また静かに開いていく。
「コムイさん」
私は胸のざわめきを押し込めるように、声を出した。
「リナリーの具合は?」
コムイさんはケースを寝台脇へ置くと、私へ向き直った。
「リナリーなら大丈夫だよ。今はブックマンが鍼治療を施しているところだ。時間はかかるかもしれないけれど、容態は安定している」
「……そうですか」
凍り付いていた指先から、僅かに力が抜けた。
アレンだけでなく、リナリーも無事だった。
その事実に、胸の奥へ張り詰めていたものが少しだけ緩む。
視界が、じんわりと滲んだ。
「ティファ?」
アレンが、不安そうに私を呼ぶ。
私は彼の手を、もう一度そっと握った。
「大丈夫。安心しただけよ」
それから、握った手を傷付けないよう、ゆっくりと外す。
アレンの指先が、最後まで離れがたそうに私の手を追った。
その動きへ、胸が小さく痛む。
「……アレン。私、リナリーのところへ行ってくるわ」
「ティファ……」
「すぐに戻るから」
私は彼の瞳を見つめ、静かに告げた。
「だから、今はコムイさんに診てもらって。あなたの傷も、放っておいてはいけないでしょ?」
アレンはしばらく黙っていた。