第10章 【第九話】空白の再会
ラビは笑っていた。
いつも通り、呆れたように。
けれど、肩へ置かれた指先には、思った以上に力が入っていた。
「看病熱心なのはいいけど、ティファが倒れたら意味ねぇだろ?」
「大丈夫。少し、立ち眩みがしただけ」
「だから、それを大丈夫って言うなって」
低い声で返される。
私を支えるための手。
それだけのはずなのに。
彼の手は、すぐには離れなかった。
寝台の上で、アレンの指が強張る。
私の手を握ったまま、彼はラビの手へ視線を落としていた。
初めて会ったばかりの二人。
けれど、私を挟んで交わされた視線には、既に穏やかとは言い難い色が宿っていた。
アレンの瞳には、不安と戸惑いが揺れている。
ラビの瞳には、冷たく押し殺された熱がある。
病室の空気が、ぴり、と張り詰めた。
その危うい静寂を破ったのは、廊下から響いた慌ただしい足音だった。
「アレンくん、失礼するよ」
扉が開き、コムイさんが入ってきた。
夜を徹して移動してきたのだろう。
眼鏡の奥には疲労が滲んでいた。
それでも、その表情には普段の茶目っ気はなく、室長としての厳しさだけが残っている。
手には、医療器具の収められた小さなケースと、数枚の記録用紙が抱えられていた。
「意識が戻ったようだね。まずは状態を確認させてくれ。左目の傷も、慎重に診る必要があるから」
アレンの身体が、僅かに強張った。
彼の左目。
マナにかけられた呪いによって、AKUMAに囚われた魂を見ることのできる目。
今回の戦いで傷付けられた、彼にとって大切なもの。