第10章 【第九話】空白の再会
「私は大丈夫よ。少し疲れているだけだから」
「その“少し”が信用ならねぇって何度も言っただろ」
その声を聞いた瞬間、胸が微かに痛んだ。
以前なら。
その言葉のあと、彼は躊躇なく私の傍へ来ていた。
けれど、書庫の夜以来。
ラビは、自分から私へ近付きすぎないようにしていた。
そのラビが今。
私の手を握ったままのアレンを、静かに見つめている。
寝台の上で、アレンが僅かに眉を寄せた。
まだ青白い顔のまま、私の手を握り締める指へ、ほんの少しだけ力を込める。
「……ティファ」
掠れた声が落ちた。
「この人は……?」
問い掛ける瞳には、不安と、僅かな警戒が浮かんでいた。
「あ……紹介がまだだったわね」
私は二人を見比べる。
「アレン。彼はラビ。教団のエクソシストよ」
「ラビ……」
アレンが、小さくその名を繰り返す。
「それから、ラビ」
私は寝台の上の少年へ視線を戻した。
「彼が、アレン・ウォーカー。以前、師匠のもとで一緒に過ごしていた、もう一人の弟子なの」
その瞬間。
ラビの翠の瞳が、ほんの僅かに細くなった。
「……へぇ」
口元には笑みがある。
けれど、その声は思ったより低かった。
「ティファが話してた、クロス元帥の弟子ってのは、お前だったんだな」
アレンは一瞬だけ私を見た。
それから、ラビへ視線を戻す。
「……ティファが、僕のことを?」
「少しだけね」
答えると、アレンの張り詰めていた表情が、微かに緩む。
その変化を見たラビの笑みが、ほんの少しだけ薄くなった。