第10章 【第九話】空白の再会
――その時だった。
静かな病室の外から、硬質な靴音が響いた。
コツ、コツ、と一定のリズムで近付いてくる。
その足音が、病室の前で止まった。
次の瞬間。
扉が開かれる。
「……やっぱ、ここだったさ」
聞き慣れた声に、胸が小さく跳ねた。
振り返る。
扉の傍に立っていたのは、ラビだった。
赤い髪。
額へ巻いたバンダナ。
右目を覆う眼帯。
露わになった翠の瞳が、真っ直ぐこちらを見ている。
口元には、いつもの軽い笑みが浮かんでいた。
けれど。
その笑みとは裏腹に、病室へ流れ込んできた空気は、妙に硬かった。
「ティファ、姿が見えねぇと思ったら」
ラビは肩を竦める。
「こんな朝早くから看病してたんさね。……ほんと、自分のことは後回しだな」
「ラビ……」
声を返しながら、私は無意識に握られた手へ視線を落とした。
アレンの指は、まだ私の手を離していない。
熱の残る指先に、僅かな力が込められている。
ラビの視線も、そこへ落ちた。
ほんの一瞬だけ。
けれど、見逃せるほど短くはなかった。
翠の瞳が、アレンの指先から、私の手へ。
そして、私の顔へ戻る。
「……任務帰りに、そのまま来たって聞いたけど」
ラビが軽く笑った。
「人の心配してる場合か?」