第10章 【第九話】空白の再会
「……っ、ティファ……!」
上体を起こそうとして、彼の身体が苦しげに沈む。
「アレン、駄目。まだ起きては――」
止めるより先に、アレンの右手が伸びた。
震える指先が、私の手を探す。
私は咄嗟に、その手を握った。
熱い。
弱々しいはずなのに、指先には驚くほど強い力が込められていた。
まるで。
そこに私がいることを、何度も確かめなければ信じられないみたいに。
「夢じゃ……ないんですね……」
アレンの声が、掠れて途切れる。
「本当に、ティファがいる……」
「ええ。いるわ」
「僕……ずっと……」
言いかけて、アレンは一度、浅く息を吸った。
包帯に覆われた顔の下で、唇が僅かに震える。
「教団へ来てからも、何度も探していました。ティファが戻ったと聞けば、僕は任務に出ていて……僕が帰れば、今度はあなたがいなくて……」
握られた手に、ほんの少しだけ力が込められる。
「……会いたかったんです。ずっと」
その言葉を口にした途端、アレンの瞳が小さく揺れた。
言いすぎたと気付いたように、彼はすぐ視線を伏せる。
「……すみません。怪我をすると、少し弱気になりますね」
胸の奥が、静かに痛んだ。
クロス元帥の下で過ごした、あの過酷な修行時代。
誰も信じられず、触れれば壊れてしまいそうだった少年。
夜に魘され、眠れずにいた彼の傍で、私は何度も小さく歌った。
何かを救えたなんて、思ってはいない。
ただ、彼が一人で暗闇へ沈んでしまわないように。
ここに誰かがいると伝えたくて。