第10章 【第九話】空白の再会
思った以上に、声ははっきり出た。
受話器の向こうが、静かになる。
胸の奥へ、抑えきれない焦りが押し寄せた。
「リナリーも心配です。容態を確認するだけでも構いません。お願いします」
長い沈黙のあと。
コムイさんが、深く息を吐く音がした。
『……分かった』
「コムイさん……」
『君の現在地からなら、東行きの夜汽車へ乗り継げば、僕より先に病院へ到着できるはずだ。経路はゴーレムへ送る』
「ありがとうございます」
『ただし、約束してほしい』
いつになく強い声だった。
『君も任務帰りなんだ。到着したら、決して無理はしないこと。身体に異常があれば、すぐ現地の医師か僕へ伝えること。アレンくんやリナリーを心配するあまり、君まで倒れるようなことは認めないよ』
その言葉に、胸がきつく締め付けられる。
「……はい」
『それから、ティファちゃん』
「何でしょうか」
『アレンくんも、リナリーも、ちゃんと生きている』
息が止まった。
『だから、焦らなくていい。ちゃんと会えるよ』
その声の優しさに、張り詰めていたものが一瞬だけ揺らいだ。
私は唇を噛み、静かに頷く。
「……はい」
通話が切れる。
私は受話器からゴーレムを外し、胸元へ抱き寄せた。
予定していた本部行きの汽車には、もう乗れなかった。
会えるのなら。
ようやく、顔を見られるのなら。
そう思っていたはずなのに。
心臓は、嫌なほど速く鳴っていた。
私は荷物を抱え直し、夜の駅舎へ向かって歩き出した。