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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第9章 【第八話】記録者の選択


ラビは、差し出していた林檎を皿へ戻そうとした。

けれど、その手が離れる前に。

私はそっと、彼の指を両手で包み込んだ。

「私は、ここにいるわ」

ラビの瞳が揺れた。

「あなたと一緒に帰ってきた。傷も治ってきてる。私は、もう消えかけているわけじゃない」

「……ティファ」

「だから、私がいなくなることばかりを考えないで」

指先へ、ほんの少し力を込める。

包帯の巻かれた左腕が、僅かに痛んだ。

けれど、手を離す気にはなれなかった。

「私は、守られるためだけにあなたの傍にいるんじゃない」

自分の声が、思っていたよりも近く響いた。

胸の内へ隠していたものまで、そのまま零れてしまいそうなほどに。

「私も……あなたの隣にいたいの」

ラビの呼吸が、止まった。

翠の瞳が、真っ直ぐ私を捉える。

いつものように逸らさない。

冗談で誤魔化そうともしない。

ただ。

握られた手の中で、彼の指先だけが僅かに強張っていた。

「……それ、反則じゃね?」

やがて落ちた声は、掠れていた。

「反則?」

「そんなふうに言われたら……」

ラビは、そこで一度言葉を止めた。

僅かに伏せられた瞳の奥を、揺れる影が過ぎる。

嬉しそうにも見えて。

同時に、ひどく困っているようにも見えた。

「……離れられなくなるさ」

胸の奥が、また小さく揺れた。

その言葉の奥にある意味を、私はまだ全て理解できなかった。

けれど。

ラビが私の手を握り返した指先に、縋るような力が込められたことだけは分かった。
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