第8章 【第七話】肩を並べる約束
答えると、彼はようやく笑った。
いつものように軽く見せようとしている。
けれど、どこか照れたような、少しだけ不器用な笑顔だった。
「ほら、二人とも!いつまで廊下で話してるの!」
医務室の前から、リナリーの声が飛ぶ。
「今行くさー!」
ラビが慌てて返事をする。
それから歩き出す直前、彼の手がもう一度だけ、私の左腕へ触れた。
傷を避けるように。
けれど、確かめるように。
ほんの一瞬だけの温度。
それなのに、その熱は不思議なくらい長く残った。
私は、隣を歩く彼の横顔を見る。
軽口ばかりで。
人懐こくて。
けれど、時折ひどく遠い目をする少年。
その距離が、ほんの少しだけ近付いた気がした。
まだ、彼が何を抱えているのかは分からない。
私が彼へ何を感じ始めているのかも、きっとまだ言葉にはできない。
それでも。
雪原で交わした約束と。
廊下で交わした、もう一つの約束だけは。
胸の奥へ、確かな音として残っていた。