第8章 【第七話】肩を並べる約束
黒の教団へ戻る頃には、空は淡い夕暮れに染まっていた。
石造りの門を潜った瞬間、張り詰めていた身体から、少しだけ力が抜ける。
左腕の傷は、歩けないほどではない。
けれど、雪道を抜け、長い移動を終えた身体には、確かな疲労が残っていた。
一歩踏み出したところで、足元が僅かに揺らぐ。
その瞬間。
「危なっ」
すぐ隣から伸びた腕が、私の身体を支えた。
腰へ触れる手は力強い。
けれど、前回のように無理やり抱き留めるものではなかった。
私の歩幅を確かめ、転ばないように支えるだけの、慎重な触れ方。
私は僅かに息を止めた。
「……ありがとう、ラビ」
「ん」
短い返事。
彼は、私が自分で立てるのを確かめても、すぐには手を離さなかった。
「歩けるか?」
「ええ。少し疲れただけ」
「その“少し”が信用ならねぇんだよなぁ」
困ったように笑う。
けれど、声の奥にはもう、戦場での焦りはなかった。
私は、彼の傷ついた肩へ視線を向ける。
「あなたこそ、医務室へ行かないと」
「分かってるさ。今回は、一緒に怒られに行くってことで」
「私は怒られる前提なの?」
「無茶はしなかったけど、怪我はして戻ってきたからな。コムイに見つかれば、たぶん一緒に怒られるさ」
「それは、あなたも同じでしょ」
「……確かに」
ラビが小さく吹き出す。