第8章 【第七話】肩を並べる約束
その声が、吹雪よりも深く胸へ入ってくる。
私は左腕の傷へ一度視線を落とし、ゆっくり頷いた。
「……ええ」
雪の向こうから、村人たちの声が聞こえた。
教会の扉が開き、ミヒャエルがこちらへ駆けてくる。
怯えながらも、生きている人々の声。
泣きながら家族の名を呼ぶ声。
アンナの村には、もう残らなかった音。
今度は、守れた。
全てではなくても。
少なくとも、今ここで震えている人々は、生きて帰れる。
喉の奥が、僅かに震えた。
「……間に合ったのね」
呟くと、隣でラビが私を見た。
「ティファ」
「大丈夫よ」
自分でも驚くほど、声は静かだった。
「嬉しいの。今度は……間に合ったから」
ラビは何も言わなかった。
ただ、少しだけ目を細める。
その翠の瞳に浮かんでいたのは、観察するための冷たさではなかった。
ほんの僅かな安堵と。
私の言葉を、そのまま受け止めようとする静かな色だった。