第8章 【第七話】肩を並べる約束
冷たい手袋越しに、彼の指先が強張るのが分かった。
「あなたが私を守るなら、私もあなたを守る」
吹雪の向こうで、AKUMAの笑い声が歪んで響く。
「一人で背負わないで。二人で、生きて帰りましょう」
数秒。
ラビは何も言わなかった。
露わになった翠の瞳が、私を真っ直ぐ見ている。
その奥で揺れていた熱が、やがて静かに沈んでいく。
消えたのではない。
形を変えたのだと思った。
彼は深く息を吐き、困ったように笑った。
「……ほんと、やりにくい相手さ」
「そう?」
「普通、守るって言われたら、大人しく守られてくれんだろ」
「私は普通じゃないのよ」
「それはもう、初対面から知ってる」
ラビの笑みが、ほんの少しだけ自然になる。
それから彼は、大槌を肩へ担ぎ直した。
「じゃあ、条件」
「何?」
「危なくなったら、勝手に一人で突っ込まない。必ずオレを見る」
私は小さく頷いた。
「あなたもよ。私を守るために、一人で前へ出ないで」
ラビは一瞬、目を丸くする。
それから、観念したように肩を竦めた。
「……了解さ」
ラビが小さく笑った。
次の瞬間。
二人同時に、雪を蹴った。
ラビの槌が、轟音と共に雪原を抉る。
吹き飛ばされたAKUMAの身体が、吹雪の向こうで大きく傾いだ。
「ティファ!」
名前を呼ばれる。
今度は、下がれという声ではなかった。