第8章 【第七話】肩を並べる約束
「ただ、中央庁は君の能力行使について、今後も詳細な記録を求めている」
コムイさんの声が、静かに低くなる。
「AKUMAを破壊し、囚われた魂を解放すること自体は、イノセンスの作用として説明できる。けれど、君のニルヴァーナはそれだけじゃない」
私は無意識に、胸元の銀の縁取りへ指を添えた。
「AKUMAへ堕ちる前の魂を、歌によって天へ還すことができる。そして前回の任務では、歪められた魂の残響を感知し、干渉した」
静かに息を吸う。
胸の奥に、あの不完全な歌の残響が蘇る。
助けを求めるように。
終わらせてほしいと願うように。
あの村に満ちていた、歪んだ声。
「そのため、今回も君の能力行使について記録を取る必要がある。ラビに同行してもらう」
記録担当。
その言葉に、私はラビを見る。
彼は笑っていた。
けれど、ほんの一瞬だけ、露わになった翠の瞳が私から外れた。
「……観察される側としては、あまり落ち着かないわね」
「安心しろって。任務中ずっと、追い回すわけじゃねぇさ」
「本当に?」
「多分」
「信用できない返事だわ」
「ひでぇ」
ラビが胸を押さえる。
いつもの調子。
いつもの軽口。
それなのに、その笑顔の下にあるものが、以前より少しだけ近く感じられる気がした。
観察するためだけではない。
記録するためだけでもない。
そんなことを思ってしまう自分へ、私は静かに蓋をする。