第7章 【第六話】この世界に繋ぎ止めて
暫くして、私はようやく身体へ力を戻した。
「……もう、大丈夫よ」
声をかけると、ラビの腕が僅かに動く。
離すべきだと思ったのだろう。
けれど、すぐには離れなかった。
その間が、妙に胸へ残る。
やがてラビは、観念したように大きく息を吐き、ゆっくり腕を緩めた。
「あー……くそ」
額を押さえ、顔を背ける。
「オレ、今かなり格好悪ぃな」
「そうかしら」
「そうさ。もっとこう、余裕のある男でいたかったのに」
「あなたにも、余裕がなくなることがあるのね」
「 ティファのせいでな」
即座に返された言葉に、目を瞬く。
ラビは言ってから気付いたらしく、僅かに耳を赤くした。
「……今のは忘れろ」
「無理よ」
「即答かよ」
思わず、小さな笑みが零れた。
笑ったことに、自分で驚く。
アンナの医務室を出てから、胸の中にはずっと重いものが沈んでいた。
それが消えたわけではない。
けれど、ほんの一瞬だけ、息ができた。
ラビは私の笑みを見たまま、言葉を止めた。
翠の瞳が、わずかに揺れる。
けれど、すぐに彼は顔を逸らし、床へ落ちたレイピアを拾い上げた。
「……とりあえず、今日は本当に終わりな」
「ええ」
「それから、医務室」
「そこまでではないわ」
「信用ならねぇ」