第7章 【第六話】この世界に繋ぎ止めて
頬の傷へ響くことも忘れたように、彼は苦しそうに眉を寄せている。
「昨日、あれだけ消えかける奴らの中へ入って、歌い続けて、帰ってきたばっかだろ」
支える腕に、強く力がこもる。
「なんで、まだ一人で立てるみたいな顔してんだよ」
その声が、僅かに震えていた。
責められているのに、胸の奥が痛む。
私が無茶をしたからではない。
その声の向こうにあるものへ、触れてしまった気がしたから。
「……ごめんなさい」
今度は、言い訳をせずにそう言った。
ラビの腕が、僅かに揺れる。
「謝ってほしいんじゃねぇ」
低い声だった。
「……見てる前で、いなくなりそうになるなよ」
息が止まった。
ラビ自身も、言ってしまったことに気付いたのだろう。
一瞬だけ、表情が固まる。
それから、誤魔化すように視線を逸らした。
「……知り合いに目の前で消えられちゃ、寝覚め悪りぃだろ」
軽い言い方をしようとした声は、少しも軽くなっていなかった。
私はラビの団服へ、そっと指を添えた。
彼の身体が僅かに強張る。
「ラビ」
「……何さ」
「私は、ここにいるわ」
掠れた声で告げる。
ラビは、暫く何も言わなかった。
支えられたまま、私は彼の呼吸が乱れていることに気付く。
やがて、耳元へ低い声が落ちた。
「……なら、一人で勝手に限界まで行くな」
その言葉に、胸の奥で張り詰めていたものが、少しだけ緩んだ。
私は目を閉じる。
温かい。
村で傷つきながら私を守ってくれた腕が、今も同じように私を支えている。