第7章 【第六話】この世界に繋ぎ止めて
翌日の午後、私は鍛錬場へ向かった。
前夜は、ラビに半ば追い立てられるようにして部屋へ戻され、そのまま眠りについた。
朝には眩暈も治まり、喉の痛みも少しだけ和らいでいた。
それでも、アンナのことを考えれば、胸の奥は重いままだった。
何もせずにいると、またあの空白の瞳が浮かぶ。
だから私は、団服ではなく、動きやすい鍛錬着へ袖を通した。
黒のハイネックの上衣。
細身の黒いズボン。
銀髪を高い位置で結い、鍛錬場の中央へ立つ。
訓練用のレイピアを二本、手に取った。
ニルヴァーナを使うつもりはない。
今、喉へ負荷をかけることが危険だということくらい、自分でも分かっている。
ただ、身体を動かしたかった。
踏み込む。
刃を払う。
身体を捻り、もう一方の剣を走らせる。
乾いた金属音が、静かな鍛錬場へ響く。
けれど、動きは思うように整わなかった。
いつもなら自然に繋がるはずの足運びが、僅かに遅れる。
手首へ余計な力が入り、剣先がぶれる。
苛立つほどに、胸の奥の重さが刃へ乗ってしまう。
もう一度、踏み込む。
アンナの声を振り払うように。
村の空白を切り裂くように。