第7章 【第六話】この世界に繋ぎ止めて
私が言葉を返せずにいると、ラビはふいに視線を逸らした。
「……ほら、もう書き終わったなら戻るぞ」
「まだ少しだけ――」
「駄目。今日は休むって言っただろ」
「覚えていたのね」
「そりゃ覚えてるさ。あんな顔で頷かれたらな」
返された声は、少しだけぶっきらぼうだった。
私は手帳を胸元へ抱え、小さく息を吐く。
「……分かったわ」
立ち上がろうとした瞬間、足元が僅かに揺れた。
ほんの小さな眩暈。
けれど、ラビはすぐに気付いた。
「おい」
差し出された手が、私の腕を支える。
「やっぱり平気じゃねぇじゃん」
「少し立ち上がるのが早かっただけよ」
「その言い訳、今日二回目だぞ」
「……数えていたの?」
「数えたくなくても目につくんさ」
低く返された声に、私は何も言えなくなる。
ラビの手は、私がしっかり立てるようになるまで離れなかった。
その温度が、静かな書庫の中でやけにはっきりと感じられた。